2008.4.26〜5.5 呉連枝老師講習会(1)

2008年4月末〜5月頭にかけ、呉連枝老師をお招きし、恒例のGW講習会を行いました。

開門拳社として、8回目の講習会となります。

スケジュール
4/26 初心者1日目  4/27 初心者2日目
4/29 六合花槍1日目  4/30 六合花槍2日目
5/3 中級・四朗寛1日目  5/4 中級2日目  5/5 中級3日目

 

08GW講習会



▲初級講習会から始まりました



 八極拳を始めて四ヶ月。と言っても就職したために時間がとれず、約一ヶ月ぶりの教室が講習会という不安だらけの参加になりました。


 私が参加した二日間の初級講習会では一日目に歩型、歩法、八大手形の説明など。二日目では小架一路、小架一路の用法、そして六大開拳まで教えていただきました。普段の教室では八極歴四ヶ月という初心者で、小架一路にいたっては形をなぞれるかどうかまでしかたどり着けていませんでした。そのため何に使うのかよく分からない動きが多く、所々これは無駄なのではと考えていた部分もあります。

 しかし、一つ一つの動作の用法を教えていただくたびに、謎が解けていくと同時に、先生や指導員の方が言う「小架一路には全てが含まれている」という言葉の意味を知ることになりました。特に十字拳など、パッと見では何をしているのかまったく分からなかったものが、実は色々な技に共通する動きであることを知りました。あんな小さな動きから関節技や投げ技へと広がっていく様は感動ものです。

 しかしそれ以上に今回の講習会での一番の収穫は、呉連枝老師に会えたことだと思います。温厚な方であるとか、おちゃめな方であるなどお話しは色々伺っていたのですが、耳で聞くのと実際に会うのではまったく違うものでした。  中国語が分からないので、直接話すことはできませんが、けして人を威圧しようとせず、私みたいなへなちょこが最前列にいても嫌な顔一つせずに形を直していただけたりと、人格まで卓越していることを肌で感じられました。なんと言うか、教えていただくときもすんなりと理解でき、見本を見せていただくときも自慢げな感じがまったくなく、人を見ていると言うより一つの自然がそこにあるような印象を受けました。人ってここまで大きくなれるものなのですね。



 今回はたった二日しか参加できませんでしたが、得るものが非常に多い二日間でした。このような素晴らしい機会を与えていただき、誠にありがとうございました。

荻窪教室 浅野翔太



▲実戦用法の解説

 初級講習会では、立ち方、歩法、八式、小架、対練、その他に手形や歩形の説明を教えて頂きました。両儀の説明の時に、自分が聞きたかった事を話されていたので嬉しかったです。
 歩法と八式の時には、動きを止めずに素早く向きを変えるやり方を習いました。
 小架の套路では、啓歩の事を何度も仰っていました。
 手形の話の時は、使い方を農具の絵を描いて説明してくださいました。
 対練の時には、順歩単提を入れて練習したの実践的で面白かったです。

 六合花槍講習会は、一日目のみの参加でしたが徒手に比べて練習量が少なく、自分の下手さが身に染みました。
 やっぱり、八極拳にとって槍はいろんな意味で本当に重要な存在なのだと思いました。
 この日一番印象に残った事は、呉連枝老師の「劈杆子を世界に広めてオリンピック種目にするのが夢である」という言葉でした。
 二日目に劈杆子を練習した様で、参加出来なかった事が残念でした。

 四朗寛講習会、今回の講習会のメインである四朗寛では套路と用法、十大形意、十大勁別などの説明をして頂きました。
 套路では、半日で最後まで行ってしまうというスピードでしたが、用法の説明などゆっくり教えて頂けて良かったです。四朗寛は套路が長いし、体の使い方も難しいので体が心配でしたが、初日以外はゆっくりだったので逆に体の調子はよかったと思います。

 講習会を終えて思った事は、毎年の事ですが「お腹いっぱい」でした。ただ今年は初日から「お腹いっぱい」状態になりました。
 初級講習会では、講習会前に服部先生が仰った「初級は低級ではない」の通り、まだまだ意識や考えて練習しなければならない事があったし、今までの練習がさらに難しく、とてもやり甲斐のある物になりました。
 槍の講習会では槍の重要性、特に劈杆子は相手となる人がいる時には練習したいと思いました。
 四朗寛の講習会では、用法説明で初めて呉連枝老師に技を掛けて頂きました。とにかく凄かったです。
 ほかにも色々な事があった講習会でした。休憩中に呉連枝老師と松田隆智先生の話も聞けました。この「お腹いっぱい」がうまく消化出来る様に練習に励もうと思います。

 呉連枝老師、服部先生、松田先生、指導員のみなさん、講習会に参加されたみなさん、ありがとうございました!!

 

土曜本部教室 奥村 知昭







 今年のゴールデンウィークも、呉連枝老師を招聘しての講習会に参加させて頂きました。今年は初級講習二日間、槍の講習会の前半一日、四朗寛講習会三日間の参加でしたが、どの講習会も非常に内容が濃く、やはりあっと言う間の六日間でした。
 この数年は毎回感じる事ですが、内容が年を追うごとに深くなり、初級講習会と銘打っていても、かなり核心に近付いた内容だったのではないでしょうか。私自身の理解の程度はともかくとして、大変貴重な機会に参加させて頂き、とても感謝しています。


 初級講座では、五大歩型の立ち方から始まり、歩法についても、いつもより多くの種類を、時間をかけて御指導頂きました。
 呉連枝老師は、三つの基本手型と八大手形について、また、五大歩型と十六大歩(歩形)についてご説明下さいましたが、その際に「型」と「形」の字を使い分けておられたのが印象的でした。 「型」は固定したもので、「形」は動きと変化を伴うものだそうです。
 歩法の練習の中では、白馬翻蹄の回身が一挙動であったり、その後の単式練習に於いても、向錘や降龍の回身が一挙動だったので驚きました。

 特に向錘については、鷂子穿林の足を使って、様々な方角へ連続で打ち続ける事ができると聞いて、一瞬頭の中がパニックになりました。最初の頃に教わった技についても、順調に(?!)難度が上がり続けていますが、よく考えてみますと、最初に習ったのは使い方のうちの一つなのかも知れません。今後は鷂子穿林を練習する時にも、白馬翻蹄や、向錘との繋がりを考えなくてはなりません。
  また、どうしても向錘まわりの話題が多くなるようですが、引き手の肘を自分の身体から離さないというのも、今まではあまり意識していませんでした。ただこれも、相手に近付いてから引き手を変化させたり、左右を打ち替える時には絶対必要だなあと、後から思いました。とても好きな技が、とても難しくなった感じです。
 また、発力の瞬間ぎりぎり一杯まで放鬆していなければならない、というお話を聞くに至っては、もう全ての動作が凄く難しく感じます。
 啓歩を教えて頂くまでは、キッカケがなくて前に出ようとすると、いきなり力んでしまうのが常だったので、啓歩は放鬆の為にも重要なのではないかと感じています。

 そして今回何よりも驚いたのは、小架の定式は全て両儀の変化だが、定式と定式の間は両儀ではない、というお話です。両儀はとても安定した形だと思いますが、冲拳で上歩する直前に一瞬不安定な形になったり、不安定から安定な状態になる時の差額の力というのもあると聞いていましたので、定式の手前が両儀なのか疑問に感じてはいたのですが、全く想像していなかったお答えが返って来たので、面喰ってしまいました。
 服部先生の仰る通り、今回の初級講習会は、初級という切り口ではあっても、とても高度な内容だったと思います。

 続く槍の講習会では、槍の基本功に始まり、六合花槍の套路や拳譜について御教授頂きました。槍の最重要点は三尖相照、つまり鼻先、爪先、槍先が、一つの平面上に存在する事だそうです。そして三尖相照から槍先の動く範囲は原則、上下は頭の高さから地面まで、左右は肩幅の範囲内でという事なので、もしかするとこれが、槍の動作が全て縦方向に見える理由なのかもしれない、と思いました。
 花槍の套路については、相変わらず順番だけは覚えている、という程度で反省しきりなのですが、それ以上に今回気になったのは劈杆子の事です。今回は仕事の関係で二日目の講習には参加できなかったのですが、そこでは劈杆子を重点的に学習したと聞きます。私は劈杆子は殆ど練習した事がなかったのですが、四朗寛講習会の昼休みに誘って頂いて「これは練習しなくちゃイカン!」と思いました。

 套路ではラン・ナー・チャーの順で練習する部分が多いのですが、実際の用法ではラン・チャーか、ナー・チャーのどちらかです、というお話を聞いたからです。これは劈杆子そのものなのに、殆ど練習していないのは、やっぱりマズイです。

 最後の三日間は四朗寛講習会でした。まずは套路の順序からじっくり、と思っていたら、何と順序そのものは、初日の午前中で一巡してしまいました。套路を覚えている参加者が多かったせいでしょうか、残りの日程は、かなり長時間かけて、用法や拳譜の解説に割いて下さいました。その分確実に、内容は深くなって来ていると感じます。

 まず用法についてですが、今回呉連枝老師は、套路のほぼ全ての動作について、表に見えている代表的な用法までは理解できるようにしましょう、と仰いました。四朗寛はとても長い套路ですので、全ての動作の用法を一通り見せて頂くだけでも、かなりの時間がかかります。しかし、一つひとつの用法についても、当然もっと多くの意味が含まれているでしょうから、改めて気が遠くなります。

 四朗寛が長年秘密であった理由の一つは、盤提の使い方や、そこからの変化が沢山示されているからだそうです。確かに盤提歩や跟提歩は、呉家の八極拳の特徴的な歩法であると聞きます。特に今回印象に残っているのが、下盤の使い方である吃根や埋根が変化してゆく過程で、いつでも盤提や白馬翻蹄に繋げる事ができるという事でした。その時にもやはり啓歩を使っていると思われるので、このあたりの歩法の難しさは、もう半端じゃない感じです。

 套路の三歩半でも、三歩半の手前までは、啓歩なしでも何とか形を真似ることができそうですが、三歩半そのものは、啓歩の事を教わっていないと足が正しい位置まで届きません。ところが一旦啓歩の事を教わってしまうと、今度は他の全ての動作も、練習をやり直さなければならない感じです。

 全ての動作は丹田から起動して、丹田から発力するという事も、呉連枝老師は以前から仰っていたのですが、今回は三つの丹田を用いて、より詳しく解説して下さいました。三つの丹田は常に同時に動き、丹田から起動する方法は、歩法だけではないそうです。

 回頭を使って、上の丹田「天突」を回す事ができるというのも驚きでしたが、これを上歩拳や上歩掌の時にも使っているのかも知れません。それに、三つの丹田が同時に動くと、三盤が同時に動くというお話は、自分でできるかどうかは全然別としても、より理解し易いと感じました。

 そして、初級講習会でも見せて頂いたのですが、四朗寛の中の挑勾子という投げが、あんな恐ろしい用法だとは思いませんでした。使い方は別子に近いと聞いていたのですが、こちらは相手の身体を巻き込む上、更に真っ逆様にしてしまいます。他門の先生方をはじめとして、多くの方が呉連枝老師にこの技を掛けて貰っていましたが、明らかに発力せず、安全に引っ掛けているだけの筈なのに、まあ体ごと飛ぶ飛ぶ… こんなところで発力されたら、一体どうなってしまうのでしょう。

 掛けて貰った方にも聞いてみたのですが、やはり掛かる瞬間まで、一切の力を感じなかったそうです。それで、初級講習会の「発力の瞬間ギリギリまで放鬆のまま」というお話を思い出しました。
 技が掛かる寸前まで力が出ていないので、相手にとっては気配がゼロのところから、殆ど一瞬にして上中下盤を根刮ぎ持って行かれてしまう様です。これでは反応のしようがありません。これが打シュワイ(打ちながら投げる)の怖さなのか、と思いました。

 また呉秀峰公が「遠打折江 近打肘というのは逆ではないか」と仰っていたというお話も、とても印象的です。大折江の様に大きな動作の技を近くで使って、肘の様に短いものを遠くで使うというのは、見た目の印象とは逆なのですが、折江は大きく動くというだけで遠くを打つ訳ではないですし、肘を遠くで使うのは防御の為であるとのお話を伺うと、やっぱり玄人の物の見方というのは凄いものなんだなあと思います。

 そして、十大形意と十大勁別について、六不輸について、傳統八極拳法六字訣と呉秀峰公傳技撃六字訣についてと、講習内容はどんどん高度になって行きます。
 十大形意は、十種類の動物のそれぞれ優れた性質を表していて、十大勁別は十種類の力の出し方を表しているそうです。両者は対応関係にあり、四朗寛の全ての動作の中には必ず、最低三つ以上が同時に含まれるそうです。この辺りになると、これから四朗寛を練習する時に、どの様に参考にしたら良いかも解らなくなってきます。

 今回の講習会で公開して頂いた事は全て、その後の練習効率が変わる事はあっても、逆に教わった日に、何か解ったり出来るようになる訳ではないと思いました。焦らず、練習サボらずを、今までの自分に対する戒めにしなければと思います。


  最後になりましたが、本当にいつでも笑顔で、私達一般の学生にまで熱心に御指導下さった呉連枝老師には、感謝の気持で一杯です。
 そして、毎年大変な思いをされて、呉連枝老師の招聘手続きに始まり、期間中の通訳までこなされ、私達にも広く学習の機会を与えて下さった服部先生、そして期間中様々な形で面倒を見て下さった拝師弟子の皆様、そして同門の皆様には大変お世話になりました。心からお礼申し上げます。有難うございました。

本部教室 高須俊郎




▲服部代表との八極対打

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